大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(ラ)1122号 決定

一件記録によれば、本件競売事件は、債権者の昭和五三年九月四日付申立に基づいて同月五日競売手続開始決定がなされ、同年一〇月一二日任意競売申立の登記が経由されたこと、本件競売不動産中、原決定添付物件目録(三)ないし(五)記載の各土地については、いずれも抗告人が所有名義人であった昭和五二年二月二四日、債権者のため根抵当権設定登記(債務者渡辺三夫、極度額一、〇〇〇万円)が経由されており、また、同目録(六)ないし(八)の各土地については、いずれも抗告人が所有名義人であった同年二月一五日債権者のため根抵当権設定登記(債務者渡辺三夫、極度額一、七〇〇万円)が経由されていること、その後右六筆の土地については同年四月八日同日付売買を原因として抗告人から債務者への所有権移転登記がなされたが、抗告人は昭和五三年一〇月八日債務者を相手方として、水戸地方裁判所土浦支部に対し、前記六筆の土地について右所有権移転登記の抹消登記等を求める訴え(同裁判所支部昭和五三年(ワ)第一五七号)を提起し、右所有権移転登記につき、本件競売申立登記後の昭和五三年一〇月一四日付で右訴提起を原因とする所有権抹消予告登記がなされたこと、抗告人は右訴訟について、昭和五四年三月一九日勝訴の判決を得、右判決は確定したが、勝訴の理由は、債務者のための所有権移転登記の原因たる昭和五一年一二月一五日売買(登記簿上は昭和五二年四月八日売買)が、債務者の詐欺によるものであり、右売買は前記事件の訴状をもってした意思表示により取り消されたというものであること、が認められる。

右認定事実によれば、抗告人はもと前記六筆の土地を所有していたものであって、これを昭和五一年一二月一五日債務者に売渡して一旦所有権を失ったものの、その後、前記勝訴判決のとおり売買の効果が遡って消滅したため、右各土地の所有権を回復したと認められる。したがって、抗告人は売買取消の効果が生じたときから再び前記六筆の土地の所有者になったということができる。

ところで抗告人は右のような事実を前提として、自己が本件競売手続における利害関係人にあたるところ、抗告人に対しては競売期日の通知がなされていないから、本件競売手続は違法であるというから考えるに、不動産競売における利害関係人の範囲を定めた競売法二七条四項二号にいう所有者とは、競売申立登記当時の登記簿上の所有者を指すと解するのが相当であるところ、抗告人は本件競売申立登記当時登記簿上の所有名義人ではなかったことが、前記認定したところにより明らかであるから、右の所有者には当らないものというべきである。また抗告人は同条四項四号にいう不動産上の権利者としてその権利を証明した者に当るともいえない。けだし、本件競落許可決定前に抗告人が競売裁判所に対し、その権利を証明したと認めるべき証拠はないからである。もっとも、抗告人は前記六筆の土地の所有権を回復したと認められること前述したとおりであるが、右所有権の回復について右競売申立登記前に登記(売買による所有権移転登記の抹消登記又は真正名義回復の所有権移転登記)を経ていたことまたは第三者たる債権者もしくは競落人らが抗告人主張の詐欺について善意でなかったことについては、なんらこれを認めるべき証拠もない。したがって、抗告人は、右各土地の所有権の回復をもって第三者に対抗することができない以上、前述の不動産上の権利者としてその権利を証明した者には当らないというべきである。

(森 新田 真栄田)

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